What is Jazz ?



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ジャズ練習法について 

                                      

1   ジャズにおける曲のkeyについて
 即興演奏をする場合に乗り越えなければいけない大きな壁の一つに「Keyの問題」がある。ジャズを志す者はおそらく、「Any key OK」宣言をするために、普段飽きもせずスケールやフレーズの練習をするのではないかと思うが・・・

 大学のジャズ研などでは多分、「Fのブルース」を真っ先にやるのではないか。チャーリー・パーカーの「Now’s the time」あたりだ。これだとテーマも簡単でいい。オスカー・ペティフォードの「Blues in the closet」ならもっと簡単だし、ミルト・ジャクソンの「Bags groove」もそう。上達してくると「Billie’s bounce」とか「Au privave」あたりを演らされるのではないか。

 何故Fのブルースなのか。Key=Fならピアノではフラット一つ、トランペットやテナー・サックスでもKey=Gとシャープ一つで済むKeyだからである。要は簡単。これがKey=Cだと、ピアノはフラット、シャープ無しで済むが、トランペットやテナーはシャープ二つとなり、不公平感が漂う。「アルト・サックスはKey=Dになるけどどうなんだ」という話もあるが、アルト:ペット、テナー=1:2で多数決から後者に軍配が上がるのは避けられない。

 一方でFブルースと平行して練習するのが「枯葉」である。Key=Fが簡単とはいっても、それはメジャー・キーの話で、マイナー・キーになると、とたんにフラットが三つも増えるからやっかいだ。「枯葉」はKey=Gm。ピアノではフラット二つ、ペット、テナーではフラット無しとなり、ピアノが割を食うのでは?といった疑問もあるかも知れないが、ピアノの場合、キーが変わったところで運指が極端に不合理になる訳でもないので、とりあえず譲歩してもらう。それに「枯葉」はマイナー・キーと、その平行メジャー・キー(Bb)が同時に練習できるぶん、合理的でもある。

 という具合に、ジャズの即興演奏はFメジャー、Gマイナーあたりから入門するのが一般的となっている。勿論中には「Giant steps」から入門するジャズ研もあるかも知れないので一概には言えないが・・・個人的にはF#メジャーあたりから入門すると、どんなプレーヤーになるのかを試してみたい。

 上記のキーで、即興演奏の方法論を学んだら、次はどのキーに向かうか。個人の好みもあるが、「Fブルース」「枯葉」が出来るようになれば、とりあえずセッションには参加できるようになるので、大抵は「セッションでやる曲」のキーからマスターしていくことになる。セッションでよくやる曲といえば・・・「There’ll never be another You」「Bye bye blackbird」「朝日の如く爽やかに」「Confarmation」「Just friends」「On Green Dolphine street」「Blue bossa」「Take the A train」etc.   FメジャーやCマイナー、Eフラットあたりが多い。

 「これだけ曲が楽しめれば12Keyやらんでもええやんか」と思われるかも知れない。しかし、それならば「Just friends」の7小節目のBbのツー・ファイヴはどうするんだという問題に直面する。そう、多くの曲はKeyがFでも、部分的にBbだったりAbの調性に変わったりしている。まさかその二小節だけを飛ばして演奏する訳にはいくまい。

 さらにオルタード系のスケールなりフレーズなりを使おうと思えば、C7の場合、Cから始まるC#マイナー・スケールを演奏するのと、理屈的には同じなので、結局は12Keyから逃れることはできない。それがジャズマンの運命だ。メカニカルなトレーニングをせざるを得ないのは、そのKeyを身体に叩き込むためだ。

 難しいKeyを半音移調して簡単にする必殺技もあるが、できれば使いたくないのが人情だ。やはりそのKey本来の色彩もある訳だし、成長もないし。

 そんなこんなで引き受けた米子市音楽祭の曲はトランペットのKeyでF#マイナーだ〜。いじめかよ(笑)Keyの色彩のイメージが先ず浮かばないんだよな・・・


2   使えるジャズ本
 だいたい今までに楽器やレコード、CD、理論書、教則本、譜面、ライブ・チャージなどにいくら投資してきたんだろうか。そんなこと怖くて言えない。楽器やレコード、CDはともかく、理論書、教則本の類は実に無駄な投資も多かった。それというのも、ワケ分からん理論書、教則本が多過ぎ。

 例えばナベサダの超有名な「JAZZ STUDY」。確かに名著である。当時バークレー音楽学校を卒業し、アメリカから帰国したナベサダが、バークレー理論を体系的に綴ったのが同著な訳だが、これを読んで理解できる人は、ある程度音楽理論の基礎を知っている人ではないだろうか。私は最初読んだ時、何が何だかさっぱり分からなかった。同様に、数多く出版されているジャズを含むポピュラー音楽理論の本は、どれもこれもが微妙に分かりづらい。そこでお薦めなのがこれ。

 「新実践コード・ワーク@〜B/藤田元一著」(リットー・ミュージック)
 
 音楽理論の基礎の部分から非常に丁寧に書いてある書物だ。@とAでほぼポピュラー音楽理論の基礎をマスターできる。コードに関しては@だけでも充分だろう。これをひと通り読んだ後に「JAZZ STUDY」を読むと、なるほどなと納得できる。

 同様に、星の数あるフレーズ集。これは本当にいいものがない。ちょっとミュージシャンが書いたとは思えないような内容に思わず唖然としてしまう。おそらく著者自身も覚えてないであろうフレーズが何百、何千と載っていて、見ただけでやる気も萎える代物だ。と思いきや、あった。これはなかなかいけるのではというフレーズ集が。

 「ジャズ・フレーズ・ハンドブック/稲森康利著」(中央アート出版社)

 それぞれ「ハーモニック・マイナー・スケール・パーフェクト・5th・ビロウ」「コンディミ」「ホールトーン」「アプローチノート」などの項目に分類されたフレーズは、タイトル通り実践的で、典型的なフレーズも多くて有難い。我々は典型的なフレーズを知りたいのよ。もちろん中にはイマイチなフレーズもあるが、3割ぐらいは「使える」んじゃないだろうか。3割使えれば凄い。そのぐらいフレーズ本はちゃらんぽらんなものが多いと思う。


3  大橋諭さんにトランペットを教わる     
       〜松江城ジャズ・フェスティバル番外編〜
 松江城国際ジャズ・フェスティバルの幕間にトイレに入ったら、黒人ピアニストのアーロン・ディールが用を足していたので焦った。何だか会場の至る所に出演ミュージシャンがいる(笑)そのあたりも同フェスティバルの大きな魅力だが、大橋諭氏(tp)がテントの中に座っていたので、ここぞとばかりにトランペットの練習方法などを訊いてみた。素晴らしいミュージシャンは大抵の場合、熱心に質問すると熱心に答えてくれるものだが、もちろん大橋さんも熱く練習方法を語って下さった。

 そこで大橋さんが言っていたのは「チューニング・スライドを抜いて練習すること」。以前アメリカ在住のクラシック・プレーヤーの写楽氏も同様のことを指摘していた。
 大橋さん曰く「チューニング・スライドを抜くとFの音(実音Eb)が出るんですよ。で、その感覚、管の長さの感覚を徹底的に身体に叩き込む。そこを原点に半音ずつ同じ感覚で拡張していくといいですよ。2年ぐらいかかりますけどね」と。

 「頭で奏法考えちゃうと脳が硬くなってしまいますよね。それだけで力みになる。こんなのってトランペットだけだと思いません?ニューオーリンズでは子供達が結構とんでもない吹き方で吹いてるんですけど、わりとさまになる音出してるんですよね〜」とのこと。

 現在チャレンジ中で、最初にチューニング・スライドを外して吹いたら、私の場合F#(実音E)に近いぐらいのピッチの音が出た。楽器本来の持つピッチよりも高めに息を当てていたのだ。かなり不合理な吹き方が染み付いている。これをジャストFまで落とすと、自分の中ではかなり下の部分で響かせているような感じになってしまう。このギャップを修正して半音づつ積み上げていく作業は半端ではないだろう。今回はやると決めたので執念深くやってみるつもりだ。ホントに2年はかかりそうである。実際に、2時間近くひたすらチューニング・スライドでF→外してGを繰り返し、観念を修正するような練習をしているけど、ひたすら地道な作業だ。

 ちなみにアメリカ在住のクラシック〜ジャズ・トランペッターのヒロ野口氏によると、「一ヶ月半音づつ積み上げていって、音の高さに対する先入観を徹底的に取り除く」のだそうだ。トランペットはマジでやっかいな楽器だな。余談ながら大橋さんの使用楽器はエルクハート初期のバック37シルバーにマウント・バーノン・バック3Cの組み合わせだった。 


4   練習はシンプルなのがベスト
 松江城ジャズフェスティバルで圧倒的なパフォーマンスを展開した大橋諭さんが当ブログを訪れて下さった(汗)練習方法のアドバイスまで頂いて、非常に有難いことです。というか最近はお蔭様で訪問して下さる方が増え、そうなるとあまり偉そうなことも書けないな〜(笑)。

 大橋さんからは「シンプルに考えるのがベスト」とのアドバイスを頂いた。ホンとに、色々考え出すと際限がなく、ますます頭が混乱してドツボにはまっていくのだが、最近、そんな負のスパイラルに陥ってたような気がする。頭で考え始めたらいい音楽だってできる訳ないのに。なんか歳とともに感じることに鈍感になってきてる。やばいやばい。

 先日、ネットサーフィンしてたら面白い練習方法に出会った。「吹奏楽がもっと楽しくなる音工房講座」というブログだが、例えば「根性論みたいだけど時には吹いて吹き切ることが大事。吹いて吹いて吹ききる中で、自分の体でどうしたら高音が出るのかを先ずは掴まないと」など、一般的な練習方法とは違う視点が新鮮。肉体の先に見えてくる精神みたいなものってあるしね。

 「結局は思っている通りの結果が現在の状況」という言葉にはそれとなく真実味があると思う。現状はすべて自分の思いが招いているというのだ。「大した演奏はできん」と考えていたら、多分本当に大した演奏はできない。逆に「上手くなりたい」と願えばなれる筈。「トランペットは難しい」という先入観がトランペットを難しくしているのかも知れない。欲しいものが欲しいと言えなくなった大人は、本当に何も手に入らない。そいつは嫌だ。金の無い貧乏よりも精神的な貧乏の方が怖い。

 という訳で大橋さんのライブを聴く機会があったら、是非足を運んでみて下さい。本場アメリカで鍛え抜かれたサウンドはやはり別格です。 
 


5   ジャズらしく演奏するために
 さて、久々の「なんぼ」ネタ。テーマは「ジャズらしく演奏する」こと。これが実に難しい訳だ。何故ならばジャズはアフタービートの音楽。アフタービートのグルーヴを出すことは、日本人には難しいと一般的に言われる。

 ドラマなどで東京育ちの俳優が不自然な関西弁を喋るのと同じで、前ノリ文化の日本人がジャズを演奏しようとすると、どうしてもダサくなってしまう。よくカラオケなどのバックで一拍目と三拍目に手拍子を打つでしょう。年配の方には顕著な傾向だが、あのノリでジャズを演奏してしまうと100%どつぼにはまる。吹奏楽を長年経験された方もきつい。どうしても矯正が必要になってくる。4ビートの音楽は前ノリでは演奏できないのである。そこで「なんぼ」では基本を見直し、矯正活動を試みている。

 昨夜の練習前に先ずやってみたのは、12Keyのメジャースケールをレガートタンギングで裏にアクセントを置いて3往復合奏すること。気の利いたジャズ研あたりでは来る日も来る日も、うんざりするほどやらされる裏タン練習だ。これを12Keyでそれぞれ3往復やる。基本中の基本といえるだろう。基本的にはメジャー、マイナー12Key、ディミニッシュ、オルタード、コンディミ、なども全部やるといいのだが、それは個人練習の範疇として、とりあえずウォーミングアップを兼ねた練習としてやってみた。

 それから、練習する曲のCDを聴いて、「どんなニュアンスでテーマが演奏されているのか」を感じる。要はいかにジャズっぽく聞こえるかを目指した練習であって、最も大切な練習と言える。ライブ後にプレイバックを聴くと、ジャズっぽくないテーマが「なんぼ」の欠点なのだが、逆に言えばこの点を矯正することによって、随分と良くなるバンドなのだと、個人的には考えている。案の定、充実した内容の練習となった。

 ハーモニー、リズムなどは、その場でどんどん変えていってもいい。所詮譜面には音符とコードしか表記されてないのだ。それをどう解釈するのかがバンドの個性というものであろう。ただ、その裏付けとしてのピッチやノリがないとまずいので、そうした部分を強化しようと、現在奮闘中です。


6   今年もあと二十日、なんぼも一歳九カ月
 早いもので今年も残すところ二十日、「なんぼ」も結成以来、一年と九カ月を迎えた。色々な活動をしてきた訳だけど、ここら辺でそろそろバンドの練習方法などを見直してみてもいいのかも知れない。メンバーの約半数はジャズ初心者。これまで週一の練習では主にアンサンブルをやってきたが、それと並行して、即興の感覚もトレーニングした方がいいような、そんな気がする。個人的には。

 即興の感覚なんて言うと語弊があるので、言葉を変えると、inとoutの感覚を身に付けるトレーニングをやりませんか(誰に問うているのかよく分からないけど)。例えば「ピアノのコードに対して音が合ってるかどうか分からん」「どこやってるか分からん」といった事態は非常〜にマズい。おそらく現状では譜面を追うのが精一杯で、耳の方まで集中できないんじゃないかと、そんな気がしますが、いかかでしょうか。

 4管の曲は随分とレパートリーも増えた(出来る出来ないは別として)ので、暫くは既成曲の完成度を高めるとして、スタンダードのコード進行の中で、コードに依存することなく、とにかく自分でフィットすると感じた音を出してみるような練習。実際に出してみてどうなのかを瞬時に判断する。「この音全然ちゃうやん」「これは完全にフィットする」「完全じゃないけどおかしくもない」―そうした感覚を実感する機会があってもいい。

 その前提として、ピアノの音を聴くこと。これは練習時のみならず、CDを聴く際にも効果的な練習になると思う。その意味で、CDを聴く際には是非「メロディー、アドリブがピアノのコードとどう関連しているかを注意して聴きつつ、ベースのルート音も意識して」みて下さい。一度にすべてのパートを聴く(笑)多分ミュージシャンは皆そういう聴き方をしている筈です。ず〜っとそうやって聴いていれば、初めて聴く曲でも、1コーラス聴くと、だいたいその曲の構造が把握できるようになります。

 リズムのトレーニングは高知で教えてもらったメソッドを使ってやってみましょう。リズム面でなんぼはバラバラ。特に管は全員の共通した語法を身に付けないことには、グルーヴしない。オン・ビートとオフ・ビートの感覚をトレーニングしましょう。すごくやることがいっぱいありそう・・・

 即興的な部分については、やはりスタンダードを1コーラス以上とにかくアドリブしてみる練習も必要かと。「常に場所を見失わない」習慣を身に付けるためにも。

 コードを見て、そのスケールやアルペジオを演奏すれば、確かに音は合う。けどやっぱり、大切なのは、その音がコードに対して心地良い響きだったことを実感することです。それが音楽の楽しさでもある訳だし。だからそのあたりを楽しみながら練習できればと思っています。


7  ジャズの練習法について
 いよいよ今日から3月。は、早い・・一日一日を大切に過ごしていっているつもりなんですが、気が付けばあっという間の一週間。年を重ねるに従って「楽しくないことはやりたくない」との思いが強くなってきます。「人生楽しいことばかりじゃないよ」と思うのも自由ですが、楽しまないで損をするのは結局自分なんですよね。

 それはさておき、どうやったらジャズがうまくなるんでしょうか。うまくない私が言っても全然説得力はないのですが、ある意味、語学などと通ずるものがあるような気がします。

 例えば、英語の学習を単語、文法、会話の3段階に分けるとすると、これをジャズに当てはめた場合、単語=スケールやコード、文法=フレーズ、会話=セッションの図式が成り立つんじゃないかと思う訳です。とりあえず単語は基本中の基本ですよね。単語を知らないと会話ができないのと同様に、スケールやコードを知らないとセッションができない。で、スケールやコードを覚えたとして、果たしてそれでセッションができるのかといえば、ちょっと厳しいでしょう。

 まったくできないことはないでしょうが、スケールを上昇・下降するだけでは、面白いセッションになるとは思えませんよね。単語だけ並べても、何となく意味は分かるのかも知れないけど、きちんと会話として成り立たないように。そのための必要なのが文法=フレーズなんです。文法は単語をある形にして並べることで、単語に会話としての機能を与えます。スケールノートやコードトーンを音楽的に並べ替えたのがフレーズです。仮にこれを瞬時にできる人ならば問題ないのですが、多くの人はそんな芸当、なかなかできない。となると、フレーズを丸暗記してしまうのがベターなんですね。

 文法を暗記するのと同じことです。これがジャズをマスターするための一番の近道でしょう。「即興じゃないではないか」と思われる方もあるかも知れません。逆説的なのですが、フレーズを暗記することによって即興フレーズが生まれるんですよ。猛烈に暗記されると、めざましい進展が期待できる筈です。

 これまでの話はあくまでも、楽器をマスターしていることが前提で、実はここが一番難しいところかも知れませんね。


8   吹奏上のシラブルの問題
 例えばCメジャー・スケールを吹く際に、頭の中で「ドレミファソラシド」と発音しているとすれば、母音も「ド」なら「オ」、「レ」なら「エ」、「ミ」なら「イ」と変化している筈だ。通常、喉を開いた際の発音は「ア」と「オ」の中間あたりと言われるが、「ドレミ〜」と発音していたら、喉がそうした形には開かない。これが結構問題になってくる。

 「ドレミ〜」とイメージした場合、ではFメジャー・スケールを吹く際にはどうだろうか。「ファソラシドレミファ」と発音してしまうのではないだろうか。それがマズイことなのだと知ったのは、トランペットを吹き始めてから十年以上経った頃だった。

 何故マズイのかというと、ジャズで大切な転調感が希薄になるからだ。ジャズはツー・ファイブなどの一時的にトーナリティーが変わるところが醍醐味の音楽。例えば、Fメジャーにおける「ファ(Root)」と、Dマイナーにおける「ファ(3度)」では機能が違うことを考えると、同じシラブルで吹いたらおかしいという話になる。

 スケール練習をする時には、音を思い描きながらも、母音は常に「ア」と「オ」の中間あたりを意識している。ただ、譜面を追い掛けると駄目だ。気付いたら「ドレミ〜」になってしまっている。私の読譜力だと一音一音を「ドレミ〜」で追い掛けてしまうので、シラブルは「ドレミ〜」となり、バテも早い。普段の練習の段階で常に意識しなければ、と思っている。


9   リズムトレーニング
 昨日(27日)、「なんぼ」今年最後の練習をしました。メンバーは4人。高知仕込みのリズムトレーニングをやってみたところ、これが揃わない。表と裏にジャストに音を入れるだけの話だけど、難しいんですよ。

 こんなことを言うのははばかられるのだけど、これまで「裏のノリはいい」とよく言われてきただけにショック。そもそも自分、最初の十年ぐらいはコンボ・ジャズができれば後は何もやりたくない人間だったため、ず〜っと頭の片隅で「ジャストはダサい」という偏った感覚のまま来ていたのかも知れない。

 表の方はともかく、裏がどうしても遅れてしまう。慣れれば多分何とかなる、のかな。来年の課題が早くも山積み状態だ・・アンサンブル、アドリブ、リズム、楽器そのもののテクニック。やることがたくさんあってきりがない。もっともこれが全部できたらプロフェッショナルと言えるけど。個人的にはリズム練習、略してリズトレは、バンド全体のノリを合わせる意味でもいい練習になると思います。


10   ジャズ・トランペッターとしての戦略(その1)
 時間が無限にある方なら問題ありません。すべてのスケールとフレーズをとことんマスターしてマイナス・ワンCDの溝が無くなるまで(レコードじゃないんだからそれはないだろう)繰り返し練習すればいいでしょう。なのですが、限りある時間でジャズ・トランペッターを目指すには、それなりの戦略が必要となってきます。

@兵器の調達
 コンボでジャズ・トランペッターを目指す場合の最低必要条件は、とにかくスタンダードで3コーラス以上吹き切ること=マウスピースのセッティングを変えず3コーラス持たせること。意外とキツいんですよ、これが。250ぐらいのテンポで32小節×3コーラス吹き切る。マウスピースが合ってない場合、まず不可能です。ビッグ・バンドの場合は96小節吹きっ放しなんてまずあり得ないので、リードはともかく、他パートの音域なら多少マウスピースが合わなくても、割と破綻にまでは至りませんが、コンボの場合、セッティングが変えられない分、破綻はあっという間です。「前歯でかい、且つ下歯に被さっている(オーバー・バイト)」の方は浅いマウスピースはまず使いこなせないでしょう。えぐりのないバックなどのマウスピースで吹き切るのも無理だと考えます。自分の唇と歯に合ったベストなマウスピースを選択することが、ジャズ・トランペッターの第一歩です。肉体的に恵まれた方であれば、マウスピース、楽器に関係なく5コーラスでも10コーラスでも吹き切られると思いますが、アマチュア・トランペッターでそういう方、未だにお目にかかったことがありません。それならば、闇雲にマウスピースや楽器を選択しないのが賢明というものです。マウスピースを選ぶ場合の最優先事項は「チョイ吹きでいい音」よりも「吹ききれる」ことです。

A敵の攻撃パターンを読む
 あと1年で受験だ、という方がいきなりディケンズの原書を読んでも無駄、無意味です。「試験に出る英単語」のように、出現頻度の高い単語からマスターしていくのが筋というものです(私は暗記が趣味のような性格だったので辞書覚えましたが・・)つまり、Bのキーから練習するのははっきり言って無駄です。まず実音のEb、Bb、F、C、Gm、Cm、Fmのキーを集中的に練習すべきです。何故ならば、スタンダード曲の7割ぐらいは、それらのキーに該当するからです。Bなどはその後ぼちぼちと練習すればいいのだと思います。12キーなど、時間的に相当余裕のある方がやればいいのです。まずは出来る曲を手っ取り早く増やすことが大切です。

B一点突破
 上記のキーで気に入ったフレーズを3個から5個ぐらい完璧に覚え込んで、それをとにかく60から350ぐらいまでの速さで演奏出来るように徹底的に身体に刻印します。理屈ではなく己の肉体と同化させるのです。そしてこれを飛び道具に使います。ハイ・ノートが仮に実音ハイD以上だとすれば、それが出ないからといって落ち込む必要はまったくありません。「出ないと駄目」という固定観念を捨てることも大切。その代わり、ミディアム・テンポであれば32分でも演奏できるフレーズを確実に仕込んでおくのです。そうした飛び道具的フレーズがあるとないでは、相手に与えるインパクトが段違いです。ジャズ通の方をも唸らせるフレーズを仕込んでおくことは、いざというセッションの際にも非常に有効です。

C隊列を乱さない
 これは最も肝心なことですが、とにかくアフター・ビートを死守する。ジャズを演奏する場合、最も馬脚が出やすい点がリズムです。ワンフレーズ吹いただけで「ジャズ度」がバレてしまうのは、リズムの良し悪しでジャズ的か否かがすぐに判断できるからです。チェット・ベイカーがどんなに悲惨に音を外している演奏でも、100%リズムだけはハズしません。「ジャズに聞こえるかどうか」の境界線がリズムにあるといえます。録音を聞きながら、自分のリズムのどの部分がジャズ的ではないのかを分析し、癖を矯正していくのが効果的かと思われます。逆にリズムさえキマっていれば、少々音がハズれようが、きちんと聞こえてしまうものです。

D総評
 限られた時間内の練習でいかにジャズっぽさを身に付けるか。それならば、遠回りを最大限回避する戦略を練らなければ非効率的ですよね。その意味ではアーバンやるよりは、一曲コピーした方が遥かに効率的です。ジャズでは殆ど使用しないダブル、トリプル・タンギングを練習するよりは裏タンギングを練習した方が近道ではないでしょうか。必要がない、というのではなく、マスターすべき物事の順序を入れ替えるだけでジャズ演奏の楽しさも随分と違ったものになってくるのだと思います。最初にすべてをやろうとして挫折した人を数多く知ってますから、余計にそんな思いを強く抱くようになりました。す。

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