What is Jazz ?



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米子ジャズ散策 

                                      

1   ジャズ喫茶今昔
 そういえば米子には「ファーブル」というジャズ喫茶があった。StailさんのHPを拝見させて頂いて思い出した。朝日町「いなだ」と駅前「ジャズマン」の双璧のほかに、東町の旧大丸(さかのぼると米子ストア)前の雑居ビルに、あった。ライオンのイラストのジャケットのコンテンポラリー・レーベルのレコードが飾ってあったような記憶がある。若いご夫婦が経営されていたような、曖昧な記憶がある。当時私は中学生だった。

 今でもはっきりと覚えているのは、ここで東京・新宿の老舗ジャズ喫茶「DIG」の中平穂積さんがビデオ上映会をされたことだ。60年代に渡米し、自ら8ミリで撮影されたニューポート・ジャズ・フェスティバルのドキュメンタリー映画を上映されていた。最も印象に残っているのが動くコルトレーンの映像だ。しかもカラーで。「うお」と、店内が一瞬どよめいた。上下左右斜めに激しく身体を振りながらサックスを吹くコルトレーンの姿がスクリーンに大写しになり音と映像が全然合ってなかったけれど、とにかく唖然とした。「いなだ」のマスターも来ていた。

 今では信じられないが、当時はジャズ喫茶のマスターといえば、ある種権威的な存在だった。まして「DIG」のマスターとくれば、中平氏見たさに「ファーブル」を訪れた人も多かったんではないだろうか。「メグ」の寺島靖国など、最近こそすっかり好々爺になってしまったが、当時はコワモテで言いたい放題の論客だった。「フュージョンは知能指数の低い音楽」と断言していたから恐れ入る。今なら即糾弾モノだろう。「ファーブル」はその後残念なことになくなってしまった。70年代のジャズ喫茶から脱皮した、新たなジャズ喫茶の形を我々に見せてくれていたのに。

 それから数年後、河崎辺りに突如としてクリフォード・ブラウンの看板が出現した。何事かと思いきや、新しい喫茶店でしかもジャズ喫茶なのだという。名前は「エル」。犬のような名前だが、れっきとしたジャズ喫茶だった。飄々とした感じのマスターだったような気がする。特に珍しいレコードがあった訳でもないのに、唯一、当時は廃盤で入手困難の極みと言われたチャーリー・ヴェンチュラのライブ盤があって我々を驚かせた。現在、米子にジャズ喫茶はゼロだ。果たして米子に再びジャズ喫茶は出現するのだろうか。新世紀のジャズ喫茶を見てみたい。


2   成田屋のこと
 「ミラージュ」と共にしばしば出演させて頂いている境港市の「成田屋」についてちょっと紹介してみたい。

 まず店の名前の由来だが、マスターが「成田さん」なので「成田屋」。まんまです・・・

 場所は国道431号を境港市方面に向かって行くと、左手に牛丼屋「すきや」があって、その手前です。ライブ案内する時に「すきや」を目印にと説明するけど、よく考えれば「すきや」に気付いた時には既に通り過ぎている訳で、転回不能な道路ゆえ、ちょっと面倒なことになる。「すきや」の駐車場に入ってしまった方が賢明かも知れない。

 「成田屋」は、レストランになる前はラジコンを中心とした模型店だったそうだ。マスターの趣味が高じてかどうかは分からないが、とにかく模型店だった。で、今は音楽系レストラン。あらゆるジャンルの地元ミュージシャンがライブを繰り広げている。マスター自身もテナー・サックス奏者で、フラジオ(超高音域)を出したいがためにテナーを始められたという。

 とにかくアメリカン・テイスト溢れる店内。それもそのはず、マスターは大のアメリカ好きで、何しろアメリカまでラジコン飛行機を飛ばしに行ってきたというから半端ではない。二人のアメリカ人が微笑んでいる写真があって「おおつ」と眺めていたら、そのうちの一人がマスターだった、という逸話が残るぐらい、テンガロン・ハットがよく似合う。まるでテンガロン・ハットに顔が生えているような感じだ。

 「なんぼ」のメンバーはマスターのアメリカンなジョークとフラジオが好きで、「ミラージュ」がはねた後などによく寄って打ち上げをさせてもらっている。いやーそれにしても趣味を貫く生き方というのは、男なら誰もが憧れる理想的な生き方ですな。われわれにとってはかけがえのない場所の一つだ。


3  境港妖怪ジャズフェスティバルの打ち上げ話
 妖怪ジャズフェスティバルのシーズンが近くなってきた。個人的に毎回見物に行っているのだけど、裏事情はさておき、一度の大勢のミュージシャンを聴けてお得感があるのは確かだ。ここ二年はどさくさに紛れて打ち上げに参加していて、舞台裏のミュージシャンを見るのもまた面白い。当たり前のことだけど、やはりそれぞれの立場とかキャラがあるんだなと思ってしまう。

 何だかんだ言ってヒノテルは音楽に真面目。いきなり「歯をインプラントするといいよ」と言われても困るが、練習方法などを訊くと、とたんに口調がシリアスになる。「僕は相手のやる気に応じたアドバイスしかしない」「こんな所に来る暇があったら練習しなよ」など、星一徹も真っ青状態だ。無論、その程度の科白にひるむ訳にもいかない。ここで何か自分の音楽にプラスになることを引き出してこそ来た甲斐があるというもの。「とにかく楽器を構うこと」みたいな精神論からマウスピースの当て方まで一通り訊いた後、こっちも酔った勢いで「一日十時間練習して出直す」などと宣言してみた。そんなことできる訳ないだろう。

 意外と寡黙だったのがTOKU。喫煙者だったのも意外だったが、本当に寡黙な雰囲気なんで、質問するのはちょっとためらわれた。一方、多田誠司は元銀行マンの履歴でも分かるように多弁で陽気な雰囲気だ。丸坊主が最近のトレードマークのようで、こんな銀行マンが家を訪ねて来たら、即110番だろう。どう見ても高利貸しの方が似合っている。

 女性陣はケイコ・リーと寺井尚子。この二人はまったく対照的なキャラである。ケイコ・リーはいかにもミュージシャン然とした、わが道をいくタイプ。宴会の席がまったく似合わない。それにしても全国ケイコ・リー・ファンクラブ山陰支部のようなものがあるとは驚きだ。十数人のファンに囲まれて談笑していた姿が印象的で、どうやら少人数の中に居た方が本人もリラックスできるみたい。それに対して寺井尚子は華やかな席向けのキャラを存分に発揮。明らかにジャズ・ファンではない物見遊山的飲み客にもサービスを忘れないマメさが凄い。だから嫌でも周りに人が集まってくる。このタイプは演奏疲れよりも気疲れするタイプなのではないか。

 しかし何よりも凄かったのが渡辺裕之のリポビタンDだ。ジャズ界は案外とジャズ歴の長さによる上下関係が厳しいようで、いきなり「あれやれ」とそそのかされ、生「ファイト一発」とやってくれたのにはびびった。CMそっくり、というか本物な訳で、さすがに本物がやると凄い。何だか本当にファイトが沸いてきそうな気がした。


4   突然、大セッション大会
 昨夜は「ツインズ」という双子のブルース・バンドを聴きに「キャリー・リー弓ヶ浜店」に行った。マンボ松本氏と三人のトリオ編成。何しろブルース・バンドのライブを体験するのは初めてなもんで、お客さんのノリにとりあえず圧倒されてしまった。いやーディープでしたよ。

 で、ライブも終わって、ひとしきりマスターと話してたんだけど、「キャリー・リー」という店名の由来は、以前マスター達が組んでいたバンドの名前だそうな。これは初めて知った。そのバンド「キャリー・リー」に憧れてプロになったのが今回のツインズという訳。そうしているうちに、マスターの「楽器持って来てたら良かったのに」の一言で、同伴のしみずりえの導火線に火が付いた。「楽器を持ってくる」と言って、本当に取りに帰ったのだ。

 ライブも終わり、殆どのお客さんがひけた頃に、リターン・オブ・しみずりえだ。結局ツインズさん、マンボ松本氏、そしてマスター、専務入り乱れての大セッション大会となった。Eのブルース、など(!)一時間半ぐらい演奏しただろうか。マスターの弾き語りでセッション大会は大団円を迎え、そして果てた。。

 いやしかし、マスターが歌う姿は初めて見た。専務がドラムを叩くところを見るのも初めてだ。凄く音楽が好きなんだなと、感動した。久々のセッションで揉んでもらい、楽しい宵となった。まさかこの日こうなるとは。アドリブと同じで一寸先は分からない。感覚人間しみずりえの勝利と言えるだろう。その調子で感覚を磨いてくれ(笑)


5   レーザー・ディスク喫茶なんてあった
 ジャズ、ブラジルは勿論なんだけど、ほかにも好きな音楽はたくさんある。例えば映画音楽。高校の頃、これにはまった。

 現在の地域交流センター田園(米子市東倉吉町)は、数年前までは喫茶店だった。田園の二階が、その昔、レーザー・ディスク喫茶だったことをご存知の方はいらっしゃるだろうか。レーザー・ディスク自体、今でもあるのかどうか分からないけど、私が高校生の頃に流行った再生ディスクで、その画像はビデオのベータ(これも絶滅したような)より優れているというので、当時話題になった。レーザー・ディスク喫茶とは、要するに音楽喫茶のレーザー・ディスク版。珈琲を飲みながらレーザー・ディスクの映画を観ることができるのである。

 ここでミュージカルを観まくった。特に好きだったのがレックス・ハリスン、オードリー・ヘプバーン主演の「マイ・フェア・レディ」。アラン・ラーナー(作詞)とフレデリック・ロウ(作曲)の強力コンビによる名曲が目白押しで、曲の素晴らしさもさることながら、レックス・ハリスンの英語の発音の美しさに痺れる。全編で三時間を超える長編映画にもかかわらず、まったく退屈することがない。これを来る日も来る日もリクエストした(笑)今思えば、マスターもよくOKしてくれたものだ。あり難いことだ。あまりの良さに英語版のシナリオまで買ってしまい、お陰で英語の成績は飛躍的に伸びた(笑)

 「マイ・フェア・レディ」と双璧をなすのは、やはり「サウンド・オブ・ミュージック」であろう。「エーデルワイス」「マイ・フェバリット・シングス」「ドレミの歌」などが有名だが、表題曲の「サウンド・オブ・ミュージック」、これがいい。主演のマリア役ジュリー・アンドリュースの伸びのある声でこれを歌われるとたまらない。アルプスの風が通り過ぎるような清涼感に包まれる。子供達を連れてアルプスを越える際にマリアを励ますために歌われる「クライム・エブリィ・マウンテン」も超名曲だ。

 ちなみに、結婚披露宴の最初の入場の音楽はオードリー・ヘプバーン主演「ティファニーで朝食を」のテーマにしました。私の好きな作曲家ヘンリー・マンシーニの曲の中でも、これはベスト1だと思う。NYの名門宝飾店「ティファニー」のショウ・ウインドウの前で、タクシーから降りたヘプバーンがコーヒーを飲みながらデーニッシュを食べるオープニングがとても印象的な映画だった。しかしカポーティーの原作と決定的に違うラスト・シーンはちょっと・・やはりホリーは自由な精神の象徴じゃないといかんでしょう。





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