Recommend CD 3 


 「なんぼ」のメンバーが紹介するレコメン(お薦め)CD

 音楽なんて所詮個人の嗜好のものだから、他人が推薦しようがけなそうが好きなものは好きだし嫌いなモンは嫌いだし、という話になるので、そもそも推薦なんてあんまり意味がないかもしれないのだが、例えば「ブラジル音楽を聴いてみたいけど何から聴いたらいいのかわからない」などとといったような、純粋かつ素朴な悩みの解決の一助にでもなればと思う。
 そして、それをきっかけにブラジル音楽を好きになってもらえば、なお良いのである。

 なお、下記の留意事項をじゅうぶんにご理解のうえ、必要な部分だけご利用ください

【留意事項】
 ※基本的に、客観性はまるでない。
 ※この1曲!とかいうノリが多いので、全部を聴くとダルいものもあるかもしれない。
 ※LPとしては感動したが、CDではさほどでもないようなものもあるかもしれない。
 ※ジャケットが好きで贔屓にしているが、曲はフツーであるものもあるかもしれない。
 ※きっちり推薦しているフリをして、実は思いつきで選択しているものあるかもしれない。
 ※わかったふうなことを書いているが、案外勘違いしていることもあるかもしれない。
 それぞれのジャケット写真のとなりに、リーダーミュージシャン、タイトル、勝手なコメント等を掲載しています。




Instrumental

Vocal ◎Musica Popular Brasileira


Musica Popular Brasileira


Gal Costa (vo) チェシャ猫の微笑
 押しも押されぬMPB界の女王となったガル・コスタ。この人の歌にはやはり華がある。それでいて常にチャーミングなのだからたまらない。ミュージシャンとしての資質に恵まれた人なのだと痛感する。このアルバムでは「同胞」とも言えるカエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ジャヴァン、ジョルジ・ベン・ジョールのオリジナルを歌う。中でもカエターノのオリジナル「風変わりな女」は強烈だ。あまりにも美しい曲。カエターノ恐るべし!意外な転調でメジャー7thに展開するくだりは官能の極み。悪魔的な綺麗さに思わず鳥肌が立つ。それをアコースティック・ギター一本の伴奏で切々と歌い上げるガルのたたずまいに、もはや言葉すら出ない。間違いなくこれ一曲で買いだ。プロデューサーはアート・リンゼイ。自己のリーダーは個人的にはイマイチだが、プロデューサーとしての才能は評価する。「風変わりな女」のここいちばんで一瞬、ガルの声にエコーをかけるなど、演出が憎い。思えばこんな曲に出会う期待を抱いてブラジルものを買い漁っていたような気がする。 (1993年)
Gal Costa (vo) Hoje(今日)
 ガル・コスタ2005年の録音。「トラーマ」というサンパウロのマイナー・レーベルに移籍後の第一弾がこの「オージェ(今日)」。現在でも若々しくキュートな声質ながら、そこはやはり女王の貫禄が漂う。「ドミンゴ」でカエターノと共演していた頃を思うと「時は流れた」の感もあるが、個人的には最も好きなヴォーカリストの一人だ。ジョイスとはまた違った意味で訴えてくるものがある。心機一転を図った「オージェ」では、奇をてらった演出などはまるでない。新しい世代のブラジルのミュージシャンの曲を丁寧に歌っているという印象を受けた。最初の2曲がフォーク、カリブ海近辺の民族音楽的な曲で「おやっ」と思うが、前半は比較的ブラジル色が薄いように感じる。透き通るようなアコースティック音楽。表題曲「オージェ」は、カエターノの息子、モレーノ・ヴェローゾのオリジナル。ちなみに、ラストの曲もそうだし、カエターノ本人の曲も歌っている。さすが息子というか、カエターノの世界と共通する部分があるな。 表題曲以降の後半では、シコ・ブアルキの曲などもあり、MPBの雰囲気の濃い内容となっている。「チェシャ猫の微笑」のように、ずば抜けた一曲があるという訳ではないが、全体的に高水準の曲が並び、非常にバランスの良い出来となっている。繰り返し聴いても飽きのこないアルバムと言える。
Gil Goldstein,RomeroLubamboy Infinite love
 ギル・ゴールドステインの名は、パット・マルティーノ(g)とのデュオ・アルバムで御存知の方も多いのではないか。ビル・エヴァンス直系のシリアスなスタイルが印象的なピアノだが、近年は音楽プロデューサーとして多くのジャズ〜ブラジル系アルバムに関わっている。このアルバムの名義はゴールドステインとブラジルのギター奏者・ホメロ・ルボンバ。そこにもう一人、タイトル曲の作曲者でもあるトニーニョ・オルタ(g)が参加しているのだから強力だ。全曲を通してアコースティック・ムード溢れる演奏が素晴らしい。中でも出色は冒頭の「マイ・フーリッシュ・ハート」。おそらくトニーニョであろうアレンジが、この曲のツボにはまっている。ジャズ・スタンダードとして有名なこの曲を、ボサノバで、こんなアレンジで演奏するなんて驚きだ。ジャケットを彷彿させる夢心地な感じは、まさに想定外だ。途中で聴かれるホメロ・ルボンバのアコースティック・ギターのソロは、相変わらず超人的。よくもまぁ之だけ細かい音符をリズムにはめ込めるものだと感心する。あまり知られていないアルバムだが、何かの雑誌で矢野顕子のヘヴィー・ローテーションになっていると知って、何となく嬉しかった。基本的にトニーニョのオリジナルが多いぶん、トニーニョ色を強く感じる。ギル・ゴールドステインが曲によってアコーディオンを使うなど、センスのいいサウンドに仕上がっている。 (1993年)
Joyce (vo) Feminina+Agua e luz (2in1)
 数年前クラブ・ブームで火がついた感のあるジョイス。その名を一躍有名にしたのが、このCDに納められた2枚のオリジナルアルバムである。1980年録音ながら、今聴いても十二分に新鮮。二十数年前の音楽ってこんなに豊かだったんだと驚く。音楽で新しい世界を構築してやろうという純粋な思いが伝わってくるような気がする。これって最近のジャズが失いつつある部分だな、などと思ったりもする。音楽が思想とか人生そのものであり得た時代だ。この類の音楽は概して色褪せることがない。しかしこの人のアルバムはどれも完成度が高い。エリス・レジーナを追悼した比較的最近のアルバム「宇宙飛行士」も、普通だったら本家が凄いだけに企画倒れに終わりがちだが、ジョイスはさすが。エリスのアクを抜き去って見事なまでに自分の世界を創り上げている。ジャストな音程で歌いだすところは大貫妙子以上で、これがジョイスの持ち味の一つだ。それだけに、しばしば声が楽器のように響く。本人もそのあたりの効果を狙っている節もあり、よくスキャットも披露する。超アップテンポでギターと寸分たがわぬユニゾンで歌いきるスキャットは圧巻。


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