What is Jazz ?



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トランペットについて A

                                      

11   ブラックバーン・トランペット
 トランペットはどれも似たような形をしてますが、一本一本の吹奏感や音色は文字通り千差万別。それ故にあれこれと買い求めてしまう訳です。これまで試奏した中で印象的だったものの一本がブラックバーンのトランペット。

 大阪の某楽器店で中古展示してあった一本を吹いてみました。シルバー・プレートでリバース・チューニング管、支柱なしのモデルでしたが、実にいい。一見変哲のない銀トランペットなのに、見た目以上に軽い吹奏感、そしてやや湿った温もりのある音色。リバース&支柱なしで「暴れ馬」的フィーリングを想像していましたが、結構地に足のついた感じで、非常に印象的でした。他のメーカーのトランペットにはないフィーリング。ちょっとオールドを思わせるような雰囲気がありました。

 おそらくやや銅の成分が多い「アンブロンズ」というこのメーカー独特の素材が、楽器のキャラクターに大いに関係しているのでしょう。地味な外観とは対照的な個性派でしたね。で、お値段の方は「30万円」。現在では定価50万円はするだろうと思われるので致し方ないところですが、高い。。一ヶ月ぐらい迷いましたけど、結局やめました。

 しかしながら、中古市場では滅多にお目にかかる機会がないだけに、ちょっと残念だったかなとも思います。まぁ楽器との出会いなんてそんなもので、「迷ったら買い」という格言通り、やはり迷ったら買いですね。


12   ハイノート
 トランペット吹奏にまつわる悩みは数多いけど、ハイ・ノートで悩まれている方は多いのではないだろうか。どの音域から上をハイ・ノートと言うのかは特にこれといった決まりもなく、人によっては五線二つ上のハイCをハイ・ノートと思うかも知れない。私個人的にはハイE(Bb楽器で)以上がハイ・ノートのように思っている。

 私はビッグ・バンド・ジャズは全くタイプではないので、それほどハイ・ノートに憧れたことはない。メイナード・ファーガソンは確かに天才的トランペット奏者だと思うけれど、以前聴いたクリフォード・ブラウンと競演したエマーシー盤では、「ブラウニーに比べてなんてイモなソロだ」と率直に思ってしまった。まぁ出せと言われて出せる音域では勿論ないのだけど(笑)ハイ・ノート・ヒッターで唯一凄いと思ったのは、デューク・エリントン楽団のリード奏者・キャッツ・アンダーソン。この人のトリプルハイC、或いはそれ以上の音は妙に心を揺さぶる。何故だか理由は分からない。

 一方、チェット・ベイカーは、晩年に至っては音域は五線下のGからほぼ五線上のBbあたり。曲によっては上はGあたりまでしか上がらない。でもかっこいいのだ。特にサブトーン気味の五線下CからGあたりの音は、まさにハードボイルドな世界。無闇には近寄りがたく、まるでレイモンド・チャンドラーの世界だ。覚醒作用のあるハイ・ノートに対して、ミドル・レンジ、或いはその下の音は心の琴線を刺激する。

 で、本当に大切なのは構成力、アイデアと悟る。私の音域は大体上はハイDぐらいまで(練習の時はもっと出るけど)。チェット・ベイカーがそうであったように、レンジの狭いぶん、速いフレーズで変化をつけようと思っている。無理してハイノートにこだわる必要性はあまり感じない。もっとも出るに越したことはないので、常に挑戦するようには心掛けているけど。

 それよりも何よりも、いかにリズムを決めるかが、かっこいいか悪いかの鍵になるような気がする。リズムトレーニングをせねば!


13   ゲッッツェンのダブルハードケース
 トランペットとフリューゲルホーンを収納する楽器ケースって案外ありそうでないものだと、トランペッターの方は一度は悩まれたことがあるのではないだろうか。それも、ハードケースとなるとなおさら。プロテックのコマ付きダブルハードケースしか選択肢がない現状だ。「なんぼ」のトランペッター・しみずりえがプロッテックを購入していたが、あれはよく出来たケースである。う〜んと迷っていたら、東京都内の楽器店でゲッツェンのダブルハードケースが中古で出ていた。しかも4980円。見た瞬間に電話を入れて即購入した。

 以前私は「ライオン・バッグ」という布製のダブルソフトケースを使っていたが、ソフトケースでありながら案外かさばり、持ち運ぶのが大変だった。肩に応えるため、近頃はシングルケースに切り替えていた。ただやはり2個のハードケースを持ち歩くとどうしても両手が塞がれてしまうため、譜面台など2回に分けて搬入せざるを得ない。そんな折、タイミング良くゲッツェンのケースに巡り合った訳だ。

 1970年代のゲッツェンのケースで、当時のゲッツェンのフリューゲルといえば、4本ピストンのモデルが有名。同モデルを収納するスペースを確保しているため、中の空間は随分と余裕がある。スカスカなのでは?との不安もあったが、可動式フックのようなもので2個所で固定できるようになっているので、中で動いたりすることはない。手前で布を被っているのがトランペット。これも絶妙なサイズで、ヤマハ製だとほぼぴったり収まる。

 マウスピースは4本収納できるものの、バルブ・オイルなどの収納場所がないため、今後多少の改造を加えてフリューゲルの横の空間を仕切ってみようと思う。ダブルハードケースの割にはコンパクト軽量な点もポイントが高い。こうなると4本バルブのフリューゲルも欲しくなってくる。4本目のバルブを押さえると、従来の音域より1オクターブ下の音域が出るようで(オクターブキーみたいなもの)、何だか面白い表現ができそうだ。「トランペット・ミュージアム」を設立する際には是非とも仕入れてみようと思う(笑)!


14   トランペット演奏と角度についての考察
 楽器の練習は試行錯誤の連続で、エンドレスと言っても間違いではない。奏法とジャズを並行して学んでいく訳だから、まさに一生勉強。「楽しんで」とよく言われるが、楽しみばかりではとてもじゃないけど続けていけない側面もある。また、楽器を演奏するということはアスリートが競技をすることと同じで、自己のイメージや身体感覚をフルに活用しなければならない。日本では中・高生の部活のイメージから「文化系」と思われがちな行為だが、実態は恐ろしいまでに体育系なのである。

 今回は、そんな試行錯誤の日々で得た、現時点での成果、というか感想を、「楽器の角度」に焦点をあてて書いてみようと思う。

 人によってはごく初歩的なことかも知れないが、歯の角度と楽器の角度は、非常に密接な関係がある。なので、歯並びに個人差がある以上、楽器の角度にも個人差があるべきだ。そのことになかなか気付かず苦しむ理由は、何と言っても外人トランペッターが楽器を顔に対して水平に構えている写真、或いは映像を日ごろから見慣れているため「楽器は水平に構えるもの」と、潜在意識に刻み込まれてしまうからだ。その上「管楽器の吹き方」の類の教本を読むと、大抵の場合「上下の歯を合わせるように」と書いてある。しかし、上下の歯が噛み合わない人はどうなるのか。日本人の多くは、上の歯に対して下の歯が引っ込み気味の「オーバーバイト」である。それを「上下の歯の先端を合わせて」吹けと言われても、まず無理だろう。

 チェット・ベイカーの横顔の写真などを見るとよくわかると思うが、正面から見る以上に下顎がかなり突き出ている。西洋人に多いタイプで、なおかつ唇が薄く歯が小さい。トランペッターとしては理想的な骨格と言えるだろう。こういう人は、多分トランペットを吹くことに関しては、我々が想像するよりもずっと苦労していない筈だ。すぐに吹けるのである。恵まれた骨格の持ち主が書いた本を、そのまま実践しても、うまくいく訳がない。どころか、逆に泥沼から永遠に脱却できないだろう。私のような典型的日本人がトランペットを吹くためには、骨格に見合ったそれ相応の戦略が必要となってくる。

 先入観、固定観念を捨てて、歯並びに対して自然な楽器の角度を考えると、私の場合、顔に対して45°ぐらい下がってしまう。ちなみに「顔」に対してであって、「歯」に対してではない。言い換えれば、「歯」に対して適正な角度は、私の場合、「顔」に対して45°ぐらい下向き、ということ。ヒーローと崇めるトランペッターに比べて、角度の違いで納得のいかない部分もあるが、そうした固定観念を捨てて、とにかく自分のフィットする奏法を探らなければ、この先一歩も進めない。上下の歯の先端を合わせるように吹くと、私の骨格ではまったく吹奏不可能となる。

 これを無理に顔に対して90°に構えた結果、多くの弊害が考えられるが、その最たるものは「上唇」をプレスしてしまうことだろう。顎が引っ込み気味の日本人タイプの骨格では上唇は下唇より突き出ていて(出っ歯ということ)、にもかかわらず90°に構えると、上唇の方によりマウスピースの圧力がかかってしまわざるを得ない。本来、下唇を固定するべきが、逆になってしまうのである。その結果、途中で音が出なくなる、高音がキツイなど、演奏自体がままならなくなってしまう。それを避けるためにも、自分の歯の角度に合致した楽器の角度は大切だ。いくらフレディー・ハバードの吹奏時のベルが顔より上を向いているからといって、あんなのを真似していたら、間違いなく一生たっても音は出ない。むしろ、ルビー・ブラフに見られるような下向きの角度が多くの日本人向きだろうと考える。




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